一昨日は釣りの先輩A氏の命日でした。
昨年、亡くなってしまった。
昨年の6月16日のブログ「ただもの、まもの」(http://www.daiichi-printing.com/blog/06/1832/)
で、書いた様に、何か魔界に引き込まれてしまった様な気がした。
大変釣りの上手な方で、
「魚が居るぞ」
と聞くと、
「あの沢は釣れるみたいだぞ。釣行を計画してくれ」
とよく言われたものだ。
仕事でもお世話になっていたが、それ以上に、二人で竿を出していると、何となく色々な事を教わった。
釣りの極意は、仕掛けや天気や場所ではない。
やはり気迫と言う事を学ばさせて戴いた事が、今でも僕の心に残っている。
もう名前を明かしても良いだろう。
イワナ釣りの二人の秘密の場所。
それは、大井川上流椹島の少し上の奥西河内。
ここに入渓する時、本流からの合流点からではなく、木賊橋から山に入る。
山を登る事3時間。
左手に奥西河内の流れが見えたら、急降下。
下流からの釣行では届かない、岩盤帯に降りられる。
そこは全くと言って良い程、竿が入っていない。
釣れるイワナは7寸以下は居ない。
大物は尺を優に越える。
ここに二人で度々釣りに行った。
A氏の情熱は、60才を過ぎても衰える事なく
『疲れる』とか
『大変だ』とか
聞いた事が無い。
そして、釣場に着くと夕方まで飯もそこそこに釣りをする。
教えられたのは、この情熱と執念だ。
昨年の2月、
「Aさん、そろそろ鮎の季節の準備ですね」
と話をしに行った時、
「伊藤さん、お金は僕が出すから、鮎の稚魚を二人の為に放流しようや!そして、二人だけで釣りをしようや」
「場所はどうする?」
と、二人で話をした。
場所は、仙俣川のある地点と決めた。
4月になって、そろそろ放流しようと、相談に行った時、何か元気がなく、
『放流は一緒にやりますか?』
と聞いても、あまり乗り気でなかった。
元気が無かったので、心配していたら、2ヶ月後に亡くなってしまった。
『隠し沢』
仙俣川のある場所は二人で決めた約束の場所だ。
この地点だけは人には話せない。
何故ならAさんを偲ぶ僕だけの場所にしたいからだ。
その昔、川の職漁師が、自分だけ持った「隠し沢」。
それは自分の欲の為でなく、その場所に愛着と崇敬の気持ちを持ったのに他ならないと思う。
僕の心の中の『隠し沢』。
そこには、大きな魔界の大イワナが住んでいる。
糸を切られる前に釣れるか?
釣り上げる前に切られるか?
0.8の道糸は強いが、竿さばきいかんで切られる。