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牛鍋 VOL.4 – NO.294

先週の土曜日、駿府寄席の券を知り合いのS本さんから2枚戴いたので、会社のYさんと一緒に聴きに行った。

駿府寄席は59回目で、残念な事に60回、つまり次回をもって一時休演となるそうだ。

その為、この日の企画の中に、今回出演の柳家小きんさん、桂文治さんの師匠、六代目柳家つば女さん、十代目桂文治師匠の清水での公演テープが残っていたので、先代を偲び、又、この駿府寄席の前身である清水で行われていた「春夏秋冬の会」の歴史も思い浮かべると言う内容があった。

今回、柳家小きん師匠の題目は『らくだ』と言う、長屋で死人を間にして、強面の人と弱者が酒を飲んで逆転すると言う話でした。(解説はチト違うかなぁ?)

 

柳家小きんさんの師匠であり、実父である柳家つば女師匠の清水でのテープが流された。

落語は蘊蓄がないので、正確かどうか解らないが、ダボ(僕)の感じた事は、何十年前の公演と今日現在の話が全く言葉一つ違わずに話された様に感じ、やはり真打の話芸の素晴らしさ、プロの技と言うものを知った。

この演題に入る前の話は、現在の世相を面白く話して、時代差を埋めてから、古典落語に入って、なる程と感じさせられた。

当日のパンフレット

その話の中の言葉で、「大家は親も同然、店子は子も同然」と言う言葉が出たが、今では不動産紹介会社に接点は有っても家主がどんな人かはあまり知らない。

この「らくだ」の登場人物は、古物を買い取る商人で、天秤棒を持っての商(あきない)の話となる。

今の若者は、天秤衡なんて知らないだろうなぁ?

この落語に入る前の観客との接点の取り方は、今日の気象であったり、政治であったり、スポーツであったりと、色々な方面から古典に結びつけてゆく。

このバランスの取り方が今日の名人(真打)の真骨頂である。

 

 

2時間余りの落語を聴いた後、Yさんと上石町の鹿島屋さんに行った。

鹿島屋さんは、鰹の刺身が肉厚で、一年中美味しくて有名である。

当然、僕等は最初は鰹の刺身を頼んだ。

鰹の刺身

鹿島屋さんは古くからのお店で、ダボ(僕)が20才を過ぎて、飲酒が出来る世代になった40年前は、今でも七間町ある「大村バー」さんと鹿島屋さんの間に確か「丁子屋」さんが有って、夕方5時頃になると、店の前には自転車が並び、静岡の酒場として三軒共有名であった。

ここの名物「湯豆腐」

刺身を食べた後に、名代「牛なべ」を食べた。

名物「牛なべ」

この牛なべには、すごく思い出が有る。

鹿島屋さんの娘さん「Nちゃん」は、中学の同級生だ。

20才を少し過ぎた大学生の時、Nちゃんが僕と、今でもゴルフを一緒にプレーするO村君と、近所のK大経済学部で学んでいたM下君の三人に、この牛なべをご馳走してくれた事がある。

もう、40年以上前の事になってしまったが、当時は、牛肉なんかあまり口にした事が無い時代だったので、今でもその時の感激は鮮明に覚えている。

 

当時、この3店舗は小さな机(テーブル)に見知らぬ人同士が一緒に飲み、会話をする昭和の酒場であった。

(大村バーは今でもその雰囲気を残している。トイレは正しく樟脳の香りでレトロ調である。)

鹿島屋さんは15年前に全面改装して、小上がりタイプのテーブル席を作り、昔のスタイルを一変させた。

この改装によって、若い人や女性客が増え、盛況だ。

大村バーも昭和のスタイルで盛況だ。

「丁子屋」さんは廃業してしまった。

 

古典落語を聞いて、古い時代から続く伝統、今の観客に最初合わせる話芸のバランスに、一考させられた後、新装して客が増える昔から名物の「鰹の刺身」と「牛なべ」。

どちらもバランスが必要と感じさせられた。

 

先日、Nちゃんに会った時、煎餅を戴いた。

もう中学時代から50年は過ぎたが、同級生という仲は、正に伝統だ。

Nちゃんから貰った煎餅

50年なんて、ほんの昨日の様で、

数ヶ月なんて、瞬の様なものだ。

 

 

         記 ダボ・イトウ

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