暦の上では既に春となっている。
夕方の陽の落ちるのも遅くなり、気持ちの良い季節がやっと到来する。
春は嬉しい。
蕗のとう、山うど、白エビ、筍等、山に海に恵みの品が多く揃う。
その中で「ナガラミ」も春の代表的な貝である。(遠州灘産が絶品)
我が家の前に、水野商店と言う駄菓子、オデンの名店が有った。(残念な事に2年半前に閉店してしまった。)
100年続いた店で、雑誌「サライ」にも掲載された事の有る有名店であった。
僕等が子供の頃、毎日通ったお店である。
子供の頃、水野商店さんでは子供の「おやつ」に、この春の「ナガラミ」を売っていた。
今だったら料理屋さんで1個600円はする大きな国産の「海ツボ」も、確か10円だったと記憶している。
大人になった今でも1個600円する「海ツボ」を注文するに躊躇するのに、子供だったダボが10円で食べていたなんて、隔世の感である。
この話はブログ「消える」( https://www.daiichi-printing.com/blog/06/7815/)で書いてあります。リンクが貼ってあるので読んでみてください。
東京から時々ゴルフに遊びに来るK氏は鹿児島生まれですが、「ナガラミ」は静岡に来るまで知らなかった。
一度食してから、大好物となり駅内の「D作、S久」などで日本酒の肴としてよく注文していた。
そんな温厚なK氏が珍しく店主に声を荒げた事が有った。
1個目を食べて、「ジャリ」と砂を噛んだ。
2個目を食べて又「ジャリ」。
3個目は皿の下の方を選んで食べたが、又又「ジャリ」と、3個目も砂が入っていた。
これにK氏は気を悪くしたのである。
折角、静岡まで来て、楽しみにしていた味であるが、台無しとなった。
「砂を噛む」と言う言葉が有る。
これは味気ない、面白みのない、と言う表現の時に使われる。
「砂を噛む」生活をすると言う時代がある。
これは生活であるので、前述の話の様な1個、2個、3個の話ではなく、毎日の連続なのだ。
しかし、人はこの連続する「砂を噛む」生活に耐えて生きるのである。
40年前、片町にあるおでんの名店「赤玉」で食べた「バイ貝」は最高だった。
その時一緒に飲んだ名酒「万蔵楽」の味を想い出している。
若かりし頃は「砂利」でも飲み込んでしまうパワーが有ったが、老人になると一粒の砂も気になる!
砂に当たっているうちに「ナガラミ」に「何で砂を飲んだんだ!!」と気が変わる。
許せん!
記 ダボ・イトウ