先週の20日、南アルプス聖沢で渓流釣師の遭難事故が有り、一人の釣師が亡くなった。
15年くらい前によく通った釣り場だった。
アマゴもイワナも混在していて、余り人も、険しいので居ない所である。
沼平のゲートから、東俣林道を歩くと、聖登山口まで一日がかりの林道歩となる。
従って、無許可でゲートを突破して侵入する。
釣師の性(さが)としてこれは仕方なく、
『ゲートで締め出す事が悪い』と言う事になる。
渓流のアマゴ、イワナは天気が荒れて来ると言う気配が解るのか、久らく餌にありつけぬ事を本能的に知り、荒食いを始める。
釣師はこれを知っていて、天候が悪くなる前には大釣りが出来る期待をして、山に入る。
多少の危険をおかす。
これも性(さが)。
雨が降って来て、川が水量を増す。
このタイミングに魚は餌を追う。
これを知っている釣師はネバる。
未だ川を渡れると思って、もう少しは大丈夫と竿を出し続ける。
充分注意をしているが、大釣りと、川の増水は一瞬の差で起きる。
大釣りの方が先なら釣師の勝ち。
川の増水が早ければ川の勝ち。
この賭けが釣師を魅了する。
アマゴは餌を銜えて針を感じて吐き出すまでに0.3秒と言われている。
一日、アタリが多い時で20回もあれば良い方だ。
合わせた秒数は6秒足らずであるが、長時間かけて釣り場に向う。
山にはそれだけ人を惹き付ける力がある。
沢で何か困る事があると、人は下降しがちである。
これも性(さが)。
そして降りる事は出来るが、降りる事が出来る場所でも登る事は出来ない場所が多い。
そして、又降りる。
これも人の性(さが)。
ご冥福をお祈りします。 合掌
記 ダボ・イトウ