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久寿餅(くずもち)


 

会社のYさんが、東京、船橋屋のくず餅を送ってくれた。

この船橋屋のくず餅は江戸時代から200年以上も続いている名菓である。

 

関東のくず餅は小麦澱粉を発酵させて作っている品で、葛を原料とした関西で言うくず餅とは一寸違う。

戴いた品に添えてあった栞によると、450日の小麦澱粉の発酵を促すそうだ。

黒蜜を掛け、きな粉をまぶして食べる。

江戸時代の食べ方はどうであったか知らないが、古くから愛された食べ物である。

このくず餅には、すごく思い出が有る。

 

亀戸天神の太鼓橋前にて

もう12年前になってしまうが、母親と二人で東京へ行った。

東京、早稲田鶴巻町生まれの母なので、東京へ連れて行くと、ことのほか喜ぶ。

何時も赤坂東急ホテルに泊って、色々な処を廻る。

ことのほか、銀座ワシントン靴店と鳩居堂は好きな店で必ず寄る。

 

この時は、少し、下町へ行ってみようと、亀戸天神に連れて行った。

亀戸天神に着くと、

「子供の事、母親に連れてられて来た」

と言って、すごく懐かしがった。

「省線に乗って、帰りには、支那料理を食べた」

と、大正時代の想い出を話してくれた。

 

そして、亀戸天神の前で、このくず餅を食べた記憶が鮮明に甦って来た。

母親を想い出して、くず餅を食べた。

 

母が亡くなってもう8年も経っている。

この写真をもって、娘達と一度、亀戸天神に行ってみようと思っている。

そして、この話を教えて、くず餅を食べると、

想い出の連続は100年以上続くこととなり、

老舗船橋屋に負けない、

伊藤家の伝統となる。

 

     記 ダボ・イトウ

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